恋人
「ねぇ、なんでこんなところで泣いてるの?」
「泣いてる顔も可愛いって男子に思われたいとか?」
「あ、それあり得る」
キャハと笑う女子の声が辺りに響く。
遠巻きで見ていた者や、そうでなかった者までもが彼女を彼女たちを遠慮なく見物しだした。
「なんか言ったら?さっきから無視してんじゃねぇよ」
「……………ないの」
固まって黙っているだけだった彼女が声を発した。
下を向いて静かな声だったにも関わらずなぜか自分には凄みを感じさせる声だった。
だがしかし彼女から距離があるからか、何と言ったのか聞こえない。
コウダさんの声に彼女たちが眉を吊り上げた。
「はぁ?何言ってんの?聞こえないんだけど!」
どうやら自分が聞こえなかったのは距離があったからではないらしい。
同じようにコウダさんの言葉を聞き取れなかった彼女たちが声を荒げた。
「もっとはっきり言えっての!!泣く声はでかいくせに、わざとかよ」
「なんでここまでされなきゃいけないのかって言ったのよ…!!」
今度は彼女たちをはっきりと向いて言葉を突きつけていた。
どうだこれで聞こえるかと言わんばかりに。
ざわついていた周りが突然シーンと静かになる。
「…は、はあ?あんた何言ってんの。いきなりヒステリー起こすなよキチガイが」
「キチガイでもなんでも結構です!自分でもこんな自分がいるなんて驚いているところなんで。でもまあそれも仕方ないですよね、こんなひどいこと次々とされたらそりゃ人格の一つや二つ歪みますって。しくしく泣くのがバカみたい。最初っから言いたいこと言えば良かった。なので言わせてもらいますけど、もう金輪際こんなことしないでくださいね、今までやったことすべてこれからも絶対に。というかもう私に関わらないでください。お互い無視しましょうよ、その方がお互い幸せです。無視できないくらい私に構いたいって言うなら姑息なことしないで今みたいにはっきり言葉で言ってくれますか?それならこれからは受けて立つんで。それが嫌って言うなら、もうこれまでのこと先生に言いつけます。証拠はとっておいてありますし、卑怯だなんだと言われてもそれくらいのことされてますし、利用できるものは利用していくことに決めましたから。どうぞその覚悟の上で嫌がらせをしてくださいね」