恋人

「俺は怒ってるんじゃないよ。ただ名前を忘れられてたことが悲しいだけ」

七瀬は悲しそうに眉をさげながら微笑んだ。

「あの、忘れていたわけではありません。間違えてしまったのは申し訳なかったですけど、キレイな名前だなってことは記憶していましたし、顔も覚えていました」

「......キレイな名前?」

「はい、七瀬優希って字面が女の子みたいでキレイだなって...」

「.........」

この言葉を面と向かって本人に言うのは気恥ずかしかったのでずっとうつむいていたが、七瀬が沈黙なのを気にしてふと顔をあげた。

そこには七瀬の姿はなかった。

「な、七瀬くん...?」

「ちょっと愛栄!!今何て言った⁉︎」

ずっと黙っていたこのみがいきなり愛栄の肩を勢いよくつかんできた。

「え?なに?」

「だから七瀬くんの名前がなんだって⁉︎」

七瀬くんの名前...?
キレイな名前と言ったことだろうか?

このみにそれを言うと、さっきまでの勢いを落ち着けるように深呼吸をした。

「その言葉の前に、女の子みたいって言わなかった...?」

「うん言ったよ?」

「ふわぁああぁ...!」


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