いたずらヒーロー。
 音楽室の中は、ヘタクソなピアニカの音で、充満していた。


 先生がそれをパンパン、と手を叩いて阻止して、みんなで合わせて曲を弾く。


 それが終わると、先生はピアニカを片付けるように指示をした。


「ピアニカはもう、今日でおしまいです。来年からは、使いません。」


 ピアニカが好きだったわたしは、先生の言葉に、みんなと同時に、えーっと声を上げた。


「5年生になったら、主に合唱を行います。」


 残念、……と心の中で声をあげながら、ピアニカを片付け、数分後にはそのショックは忘れて、隣のゆうちゃんに次の時間割を聞いていた。


「次は算数だよ。最悪だね〜。」

「うわぁー、やだなぁ。」

「算数教室、暖房壊れてて、寒いしね〜。」



 そんなこんなで、1日を終えて、家に帰ると、わたしは早速、持って帰ってきたピアニカを開いた。


 そしてそこでまた、異変に気がついた。


「ホースがない……。」


 ピアニカのホースがなかったのだ。


 長い物と短い物があったけれど、どっちも。


「これじゃあ弾けないよ〜。」


 わたしはピアニカの蓋を少し大袈裟に バタン、と閉じて、床に寝転んで、不貞腐れた。


 正体もわからない犯人に、怒りを覚える。


 見つけ出したら、もう、絶対絶対、許さないもん。
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