夏の町
一緒に乗り込んだ多くの人と同じように、私も席を確保してスマートフォンに目を落とす。
”歩きスマホはやめましょう”と注意を促されるようになってどれほど経っただろうか。月日が過ぎるのは驚くほど早い。
1時間も2時間も電車を待っていたあの頃からまだ3年ほどしか経っていないというのに、私を取り巻く環境は気がつくとがらりと変わっていた。私があそこにいた頃には、スマートフォンは発売もされていなかった。
”歩きガラケーはやめましょう”などという標語もなかった。
気がつくと桜が咲き、気がつくと蝉が鳴き、気がつくと葉が紅く染まり、気がつくと色づいた葉が落ちていた。
私の時間はいつからこんなに早く流れるようになったのだろう。