夏の町
今はこんな空の色になるほど暑い季節ではない。
より栄えた街に出たことで、季節を読み違えるほど私の感受性は狂ってしまったのだろうか。
しかし、力強くまっすぐに伸びる太陽の光も、その太陽に顔を向けて咲き誇る向日葵の色も、光を受けてキラキラと輝きを放つ海も、今が夏だと訴えているように思えた。
ーー海?
移り住んだこの街に海はなかったはずだ。否、正確に言うと市をいくつか跨いだ北の端に海はあることにはある。しかし、私が乗り込んだ地下鉄は市内までしか繋がっていないはずだ。