雨降りの日の彼女
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あいつのことで一喜一憂する彼女の頬に手をあてて、ずっと俺のほうに向かせておけたらいいのに。

そしたら俺だけを見てくれるし、彼女が泣くこともないのに。



「…はは」



乾いた声で笑ったら、冷たいものが俺の頬を伝った。
そんなことできるわけないのに。
そんなこと、彼女が望んでいるわけないのに。

ただ、彼女のすべてを浩介が独占してるのが嫌で。
別に、意図的ではないこともわかっていて。
だから、浩介を憎むこともできなくて。


「…もうやめようかな」


こんなにつらいなら、もう想うことをやめてしまおうか。
そうすれば、もう胸の痛みに悲しくなることはないだろうか。


本当にほしいものが手に入らないなら、いっそうのこと、壊してしまえばいい。





「……さよなら由宇。」

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