雨降りの日の彼女
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「…で、やってあげるんでしょ、茜。」


「何を。」


田村と別れて少し、携帯から顔を上げて、浩介が唐突に話を振ってきた。


「ヤマはり。」


「……時間があれば、ね。」


「やっさしいなー茜は!それをもう少し僕に向けてくれると嬉しいんだけどなー。」


「やだよ。お前面倒くさいもん。」


浩介の言葉を一刀両断し、携帯で明日の天気を調べる。


「明日晴れ?」


「夕立らしいよ。」


「うわ、一番嫌い。」


「傘持ってきてね。俺の分も。」


あははと笑ってみせると浩介は顔を歪めてみせるので、余計に笑ってしまった。





彼女に会わない時間は、学校と、浩介たちとすごす時間と、テスト勉強で。
でも大半を費やしたのは、茜色のノートを黒で塗り潰すこと。
鮮やかな色の気持ちも、澱んだ色の気持ちも、全部。



でもそれも、もう終わるよ。

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