雨降りの日の彼女
.






「久しぶり。」


改札から出ると、彼女はまた同じ言葉を繰り返した。
俺もそれに「久しぶり」と返す。


「一週間ぶり…ぐらい?」


「そ。たった一週間しかたってないのに久しぶり。」


「前は雨が多かったから。会う頻度が高かったんだよ。」


「まあ異常気象でも梅雨明け近いからな。」


「ね。」


改札から離れて、できるだけすみの方に寄る。


「どう?」


「なにが?」


「浩介。」


あいつの名前を出した瞬間、空気が固くなった気がした。
彼女の表情が知りたくてチラリと目配せすると、やはり表情も強ばっていた。

.
< 123 / 125 >

この作品をシェア

pagetop