雨降りの日の彼女
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「…前よりは、ね。大丈夫になったよ。
ただ、人にその話振られるとやっぱダメだね。
ぎこちなくなっちゃう。」


あははと笑ってみせる彼女は、やはり眉尻は下がったままで。


「あとはきっかけだけだよね。
梅雨明けたら浩介君見る回数減るから、たぶん忘れるよ。」


彼女はそう言って、今日はあまり湿気の影響を受けてない髪をくるくると指に巻き付けた。
彼女はわかっているだろうか。
浩介への彼女の言葉は、俺にも当てはまるということを。
俺のことも、忘れてしまうと言っているのだと。

でも、どうせなら自分で壊してしまおうと思う。


「由宇、きっかけ、あげようか?」


「え?」


彼女がこちらを向いたと同時に、彼女にキスをした。
頬でも額でもなく、唇に。


「好きだよ。」


唇を離しながら、小さく呟く。


「きっかけ。俺を好きになればいいよ。」


瞬きすることなく放心している彼女に、笑いながら言った。

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