雨降りの日の彼女
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「また泥はねてるし。」


ぼそっと独り言を口にする。
彼女の白いハイソックスには、黒い土の後。
どんな道を通って学校へ行っているのだろうか。


「茜?何笑ってんの」


後から来た浩介が、傘についた水滴を払いながら俺を呼んだ。


「なんでもないけど…周りに迷惑、それ」


「だって水ついたままだと電車ん中濡れるじゃん。」


「電車よりも人間気にしろよ。ったく……」


俺はため息をついて、閉じた傘を降る浩介を放置し、電車を待つために彼の横に並んだ。


「………お前、なんかイライラしてね?」


「は?」


「さっき別れた時よりイライラしてんだろ。」


「………………してない、はず。多分。」


「なんだよ多分て。」


俺の返事に笑う浩介。
イライラしてない。きっとしてない。
多分、浩介の傘の水がとんだせいだ。


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