雨降りの日の彼女
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「はあ、だいぶよくなった…かな?
ありがと、えと、…茜君?」


「呼び捨てでいいよ。」


「あ、じゃああたしのことも由宇でいいよ。」


「ん」


「…で、浩介…君なんだけど」


「あのさ」


彼女の口が浩介の名前を紡いだ瞬間、俺の口が開いた。
彼女は不思議そうな顔をして俺を見ている。

彼女の思考を俺で占拠してしまいたくて。
何か、彼女の心から離れない言葉を。


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