雨降りの日の彼女
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「ちょっと用事あって、急ぎたいんだけど」


「え、そうなの?引き止めてごめんね」


彼女の謝罪に「いいよ」と「ありがとう」を言い、残りのコーラを飲み干し、席を立つ。


「あ、そうだ、由宇」


「え?」


名前を呼びながら振り返ると、レモンティーを手にした彼女がこちらを見てる。
俺は少しだけ、口角を上げて言った。




「浩介は俺のだからあげないよ」




「…へ?」


にっこり笑ってそれだけ言うと、彼女は間の抜けた声を出し、目は点になっていた。
それを横目に見ながら「ばいばい」と言って、背中を向けて手を振った。

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