雨降りの日の彼女
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「…由宇、はなし」


「行くよ」


「は?どこに?てかでん」


「うるさい、ほらっ」


彼女に勢いよく引っ張られ、呆けていた俺は簡単に体勢を崩してしまった。
それを見計らって、彼女は更に引っ張ってくる。


「ちょ、本当に待」


ヨタヨタとおぼつかない足取りで、自分よりかなり背の低い彼女の後をついていく形になる。
周りが何事かと振り返り注目してくるが、かまってなどいられなかった。

電車来るんですけど。
てか、来たっぽいんですけど。
…帰りたいんですけど。


俺の嘆きの言葉は、どれだけ彼女の耳に届いただろうか。


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