雨降りの日の彼女
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「…」


「…あかね」


「…」


「ねぇってば」


「電車乗れたのに」


「ごめんってば!」


チラリと目配せしながら恨めしそうにそう言うと、彼女は立ち上がって大音量で謝った。


「由宇、ここどこかわかってやってる?」


「え?…うわぁっ」


「お願いだから静かにして」


俺は彼女の腕を引っ張って隣に座らせた。
勢いよく尻餅をつく形になったため、彼女は痛そうに眉を寄せた。

今俺達がいるのは、駅のエントランスの階段の下のほう。
隅っこに座ってる。


「すっげー目立つからやめて。今度やったら俺帰るよ」


「わ、わかった」


彼女が慌てて同意したので、俺は一つため息をついた。

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