雨降りの日の彼女
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「由宇?どうした………」


いいかけてやめた。そして前を向き、


「また今度説明するからさ、今日は帰って。」


そう言った。
田村は一瞬眉間に皺を寄せたが、「わかったよ」と行って階段を登っていった。


「由宇。」


「…。」


「ゆーう。」


「…………。」


うつ向いたまま、未だ俺の後ろに隠れる彼女。
俺の学ランの後ろを引く手は震えていた。


「…由宇、あいつならもういないから。」


言って、彼女のいないほうの左手で、彼女の頭をポンポンと撫でる。
すると、彼女は俺の背中にくっつけていた頭をあげ、こちらを向いた。
俺と目が合った瞬間、肩をビクリと震わせて、また隠れた。


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