雨降りの日の彼女
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SHR終了後、携帯電話を開くと着信が一件入っていた。
友達の「じゃあな」って言葉に応えながらリダイヤルボタンを押し、耳に当てる。
呼び出しのコール音が数回した後、『もしもし』と彼女の声が聴こえた。


「何?雨降ってないけど」


俺が窓の外に目をやりながらそう言うと、


『もうすぐ降ってくるよ。今日の降水確率、夕方から80%だったから』


ニュース見てないの?と続けてくるので、「うん」と答えた。


『あたしもうすぐ駅に着くんだけど、暇?』


「うん、駅前のコーヒーショップにいて。
あ、コーヒー飲める?」


『うん。じゃあそこにいるね』


「ん」


携帯の通話を切って、ズボンのポケットに突っ込む。
必要なものだけ鞄に突っ込んで、肩にかけて立ち上がり、それからダッシュ。
今ならまだ浩介が生徒玄関にいるはずだ。
捕まえて傘を借りなければ。


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