雨降りの日の彼女
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駅前の某コーヒーショップ。
全国展開のこのショップのコーヒーは深みがあって好きだ。
ここに着くころには雨も降り始めていて、あながち天気予報も信頼できるかなぁなんて思った。

扉を押すと、店員に「いらっしゃいませ」とか「お一人ですか?」とか声をかけられた。
こういう、馴れ馴れしいと言っては失礼だが、対応が苦手な俺は、適当に「はい」と答えて店内を見渡す。
すると、こちらに小さく手を振る彼女が目に入って、俺はそちらに足を向ける。
座る時に「ホット」と注文して、座って長く息を吐いた。


「…………なに」


「や、だって」


向かいでクスクス笑う彼女に、恨めそうに尋ねる。


「店員さんのこと、嫌がってるのがまるわかりなんだもん」


「うるさい。ほっといてよ」


恥ずかしくなって、未だに笑いを噛み締める彼女から顔を背けた。
「ごめん」と言いながら笑う彼女をチラリと目だけで見て、目が合う寸前にまた目をそらした。

その笑顔が、ただ純粋に可愛いと思った。


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