雨降りの日の彼女
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彼女と雨の日にしか会えないのは、彼女がバス通学だから、らしい。
雨の日のバスは、濡れた傘と、晴れの日より多い人でいっぱいで、むさくて息苦しいらしい。
だから雨の日は、バスに乗りたがる人間心理の逆をついて歩くらしい。

「らしい」で終わるのは、全て彼女が言っていたことだから。
俺はずっと自転車と電車と徒歩で通学してるから、そういうのはちょっと理解できなかったが。

暇だし、近くのコンビニにでも行こうかと立ち上がると、


「いたっ」


「がっ」


二人分の悲鳴が上がった。
片方は俺ので、もう片方は、


「…浩介?」


「よ、よう」


顔を押さえながら空いてる手を上げて答える浩介がいた。

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