雨降りの日の彼女
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「茜」


「あ。」


名前を呼ばれてそちらを向くと、由宇がいた。
何故か、手には水色地に白の細いストライプ柄の傘を持っているのに、彼女は頭から濡れていた。


「由宇、ちゃんと傘さして来た?」


「全部茜が悪いのよ。」


「は?俺?」


「茜が、浩介君といたからっ」


真っ赤な顔で少しだけ声を張って、彼女はそう言った。


「……いたけど、それで何で俺が悪いの。」


「だから、茜だけだと思ってたら浩介君もいて、びっくりして傘落としちゃったんだよ!」


「…あ、そう。」


必死そうに顔を手で覆って言う彼女に、俺は呆れながら適当に相槌を打った。

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