雨降りの日の彼女
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「もっとドバッと濡れたらまだ髪が落ち着いたのにな。」


「余計くるくるになるんじゃねぇの?」


「そういう場合もあるけど。
…茜、その前髪、うっとうしくないの?」


髪を拭きながら、由宇が俺の前髪を指差した。
そういえば、切ろうと思って切ってないな。


「うっとうしいけど切りに行くの面倒だし。」


「じゃあ…」


彼女は自分の鞄をゴソゴソとあさり、「あった」と言ってこちらを向いた。
そして、「動かないでね」と言って、俺におおいかぶさってくる。


「え、なに、いたっ」


「動くなって言ったでしょう?」


行動の意図が読めず、体を捩ろうとすると髪を引っ張られた。
なんてバイオレンスな彼女。

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