雨降りの日の彼女
.


「由宇」


「外しちゃだめよ。」


「…なんでこれなの?なんで真っ赤?」


目を凝らすと、赤地に細かい花柄のシュシュで、男がこれをつけるのはどうかと思う。
それに雨降りの鉛色の世界では、非常に目立ってしまう。


「違うよ。」


「え?」


否定の言葉を向けられたので、俺は彼女に目を向けた。
何が違う?
すると彼女は酷く楽しそうに綺麗に笑い、



「赤じゃなくて茜色だよ。」



また嬉しそうにそう言った。


「…そう。」


俺はじっと彼女を見つめ、それだけしか返せなかった。

.
< 68 / 125 >

この作品をシェア

pagetop