雨降りの日の彼女
.



「やだ。あれはだめ。」


まっすぐ目を見て言うと、田村が少し怯んだ。


「…何、もしかして彼女?」


「違う。けどだめ。俺のだから。」


「…………片想いか」


「うるさい」


「ぶっ」


俺は空のパンの袋を田村の口に突っ込んだ。


「とにかくあれはだめ。他の子あたって。」


俺はそう言って踵を返した。
こんな冷たい態度をとったら友達でなくなるとか、そんな心配はしない。
だって男同士だし。


「なになに?何話してたの?」


「別にー。」


嬉しそうに聞いてくる浩介に、俺はそっけなく返して自分の席に座った。

.
< 82 / 125 >

この作品をシェア

pagetop