雨降りの日の彼女
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「あ、あの、北沢くん」


「何?」


彼女と同じ制服を来た女に呼ばれ、そちらを向く。
彼女より髪は長くてストレート。
身長も彼女より5センチは高いだろう。
校則通りの膝丈のスカートで、お手本のような大和美人。


「私、北沢くんが……」


顔を真っ赤にした大和美人をまっすぐ見ていると、相手は俺の顔を見て言葉を切った。


「…何?」


続きを促すと、大和美人は言いにくそうに言葉を濁しながら、


「な、泣いてるから…。」


そう言って、眉を寄せてこちらを見ていた。
指摘を受けて、自分の目元に手を伸ばす。
濡れた感触がして、そのまま頬を伝った。


「あの、大丈…」


「ごめん。」


触れようとしてくる手を払い、言う。


「俺ね、好きな子いるから。」


「殺したくなるくらいに」と付け加えて、涙で濡れた顔で笑ってみせた。

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