雨降りの日の彼女
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「そういえばさ、あのさ、この前の子なんだけど。」


「…ああ、あの大和美人っぽい子?」


「うん。」


急に振られた話題に、一瞬反応が遅れた。
あれはあまり思い出したくない。
まさか人前で、しかも知らない女の前で泣くなんて気恥ずかしい記憶だ。
彼女は両手で水滴のついたグラスを触りながら、眉を寄せて、少し上目遣いでこちらを見た。


「あのね、個人的な、あたしの好奇心なんだけどね、…なんで断ったのかなって。」


「なんでって…好きなやついるし。」


ケロリと言って、俺はストローに口をつけた。
少し炭酸の抜けたコーラが喉を流れる。

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