雨降りの日の彼女
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「それだけでよかったのが知りたいって思うようになって、近づきたいって気持ちになるの。」


「うん。」


「うんって……そ、そんな感じだよ。
あたしはまだ知りたいの地点で止まってるけど………いつか、いつかさ、浩介君の世界にあたしもいたいなって思う。」


「…うん、わかるよ。」


「………よかったぁ、伝わって。」


彼女は自分の思いを理解してもらえたことに安堵したようで、満足そうな笑みを浮かべていた。
少し頬を赤く染めて微笑む彼女は酷く可愛らしくて、その頬に触れたいと思ったが、俺は手を伸ばすのはやめた。


「ねぇ、茜はどんな恋をしてきて、今どんな恋をしてるの?
それと、好きな人って誰?」


今度は彼女がとても興味ありげにテーブルに肘をつき、身を少し乗り出して尋ねてきた。
その表情は楽しそうで、「教えてよ」と小さめの唇が俺を急かす。

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