雨降りの日の彼女
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「聞いても楽しくないよ。
今までの恋はそういう、由宇が考えてるような優しい恋じゃなくて。
ただ惰性で付き合ってるって感じだったから。」


俺は苦笑混じりにそう言った。
「好き」と言われて、「そう」と答えて付き合う。
そこにある俺の感情といえば、「なんとなく」。
「でも」と彼女は言う。


「言い方からして、今の恋は違うんでしょう?」


「……うん、全然違う。」


にこりと笑って尋ねてくるから、少しみとれてしまって反応が遅れた。


「たぶん今は、由宇が言うような恋をしてる、きっと。
……相手は言えないけど。」


「そっか。よかったね。」


曖昧にしか言えない俺に、彼女は追求せずに、ただ笑ってそれだけ言った。

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