赤いエスプレッソをのせて
(まるでバカでかい弟ね)

なんて思いながら、タオルケットを引き上げてやる。と、前屈みになった状態で、私は電池が切れた時計みたいにかちりと止まった。

数十センチ先の、彼の寝顔に、釘付けられる。

いつもニコニコと微笑んでいる頬はただシャープな線を描き、唇はきっちりと結ばれているかと思いきや、ほんの少しだけ開いていて、そこから白い前歯がちょろっとだけ覗けた。

すーっ……すーっ……すーっ……と規則正しい寝息に、年上に見えない向くな表情が、胸の奥をガリガリと引っ掻いてくる。

魔法使いにお願いして、彼を一生眠ったままにしておいてもらえたらなと思わせる、そんな寝顔だ。

昨日弁当をぶん投げてやったせいでシャツは着てない。

男が着てもおかしくない大きめのトレーナーを貸してやったんだけど、そのせいで彼の体はいつもよりもさらに細身に見えてしまう。
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