赤いエスプレッソをのせて
「うん実は――僕がお世話になったのが二十歳までなのは、彼ら夫婦が亡くなっちゃったからなんだ。
おばあさんは僕が来てから四年後に、おじいさんは六年後に……どっちも老衰だったんだ。なんだか信じられないくらい、静かに息を引き取っていったよ」
「……」
「だから思ったんだ。人間は親切だけど、その親切に最後まで責任を持てない、意地悪な存在なんだって。神様の意地悪、なんてよく言うけど――神様よりも、人間のほうがずっと意地悪なんだよ」
「……それから……?」
昼下がりのベッドの中、彼が焼いてくれたトーストを食べて、二度寝を決め込もうとベッドに横たわっていた私は、流し台でお皿を洗っている彼がよく見えるように、ちょっと体をずらした。
長身の彼が前屈みになって皿を洗っている姿は、見ていてかわいい。
いとおしさと、背骨が抜き取られて動けなくなるくらいの恋しさが胸から喉へ同時にせり上がってきて、息苦しくなって、小さな咳をひとつ、そしてトーストをかじることでごまかした。
おばあさんは僕が来てから四年後に、おじいさんは六年後に……どっちも老衰だったんだ。なんだか信じられないくらい、静かに息を引き取っていったよ」
「……」
「だから思ったんだ。人間は親切だけど、その親切に最後まで責任を持てない、意地悪な存在なんだって。神様の意地悪、なんてよく言うけど――神様よりも、人間のほうがずっと意地悪なんだよ」
「……それから……?」
昼下がりのベッドの中、彼が焼いてくれたトーストを食べて、二度寝を決め込もうとベッドに横たわっていた私は、流し台でお皿を洗っている彼がよく見えるように、ちょっと体をずらした。
長身の彼が前屈みになって皿を洗っている姿は、見ていてかわいい。
いとおしさと、背骨が抜き取られて動けなくなるくらいの恋しさが胸から喉へ同時にせり上がってきて、息苦しくなって、小さな咳をひとつ、そしてトーストをかじることでごまかした。