赤いエスプレッソをのせて
そんな嘘を平気でついているのに、どうして私と一緒にいたいと願った彼を責めることができるっていうのよ。

そんなのおかしい。

「……ふぅん。そっ。ならしょーがないわね」

と、私はわざとらしいほどあっけらかんとした声で言ってやった。

どうやら断罪を待っていたらしいショーが、驚きで喜びで表情を彩る。

「えっ、いいの? 許してくれるんだ、美代さん」

密かに、くすりと笑ってしまった。とても歳上には見えない。

若干の後ろめたさを抱えながら応えると、彼は突然、後ろから私をそれごと抱きすくめた。

その途端なにもかもをすっ飛ばして、これだ、と思ってしまった。

私が求めてやまないのは、このぬくもりと……確かな存在感なんだ。

『私というもの』を大切に扱ってくれる人を、現実に――夢幻や妄想じゃなく――肌で感じることなんだ。
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