赤いエスプレッソをのせて




肩の千代が、疎ましい。

私はもう、千代の存在なんて要らないんだ。

今ほしいのは、あたたかさと、明海さんの生まれ変わりという『嘘から生まれた現実』。

このふたつだけなんだから、大して高望みでもないと思うのよね。

彼は私がほしいものを与えてくれる。

だったら私も、それに報いるのが当然。

「――ったく、守ってくれるアンタがそんなんで、いったいどうするのよ」

「ご、ごめん……」

六月も終わる今日、朝から雨が降っていたわけだけど……ショーの体も、グレーに染まった。

時期の早い夏風邪を引いたんだ。

冷蔵庫から『熱冷まシート』を出して、ショーのひたいに貼ってやる。

さっき計ってみたら、なんとまあ、九度八分もあったもんだから驚いた。

日常的な体温が五度七部ぐらいの私にとって、いったい九度という熱がどんな世界なのか、見当もつかない。
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