赤いエスプレッソをのせて
(――どうしよう、九度なんて熱、どうすれば下がるってのよ……)

肩の千代には訊ねない。

彼女が私の作り出した幻だからというわけでも、六歳の少女に聞いても詮無いからというわけでもない。

単純に、彼女を無視しているんだ。

『ドクター・ドリトル』という映画に出てくる意思が、動物の声を聞いても無視するのと同じように、千代がなにかに映っていても、無視した。

自然、自分ひとりだけでなにもかも考えることになるわけだけど、思えば今までだって、結局はそうだったんだ。

肩上の千代は答えてなんかくれなかった。

答えは、全部私が出していたんだ。

(とにかく、講義終わったらすっ飛んで帰らないと……ショーがどうにかなったら、私ゃこの先どうなれっていうのよ)

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