赤いエスプレッソをのせて
ぽつんとひとり、テーブルに腰かけて始業ベルがなるのを待ったけど、こんな風にひとりで座っているのが、信じられない。

家で寝てるか、バイトに出てるか、もしくはショーとデートに行くかという三択ばかりの生活だったから、外出時、すぐそばにショーがいないというシチュエーションがあまりにも強烈に感じた。

空さみしさが、手にしているヒンヤリ冷たい缶ジュースから伝わってくるようだ。

(なに落ちてんのよ。講義が終わったら、すぐにまたショーと逢えるじゃないの。情けないぞ、私。二ヶ月くらい前は、アイツのこと嫌いだったくせに……なに骨抜きにされてんのよ、しっかりしなさい)

自分を自分で叱咤して、景気付けにオレンジジュースを一息で飲み干す。

すると甘味よりもピリッとした酸味のほうが強くて、一瞬驚いた。

なんなのよ。

不機嫌ながらに見れば、缶にはオレンジ『&グレープフルーツ』というプリント。

後味響く苦味と酸味は、コイツだったんだ。

ちっ、失敗したなぁ……。

軽いアルミ缶を両手で握り潰したその時になってようやく、ベルがけたたましく鳴った。
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