赤いエスプレッソをのせて

「すみません……」

言いながら何食わぬ顔で座ったものの、私の頭は錯乱していた。

叫び声をあげてしまったからじゃない。ついさっき見た夢に翻弄されていた。

千代を、殺した時の夢。包丁を握った感触が、まだ掌に残っている。

冷や汗が、喉元を伝っていた。

夢のことなのに……昔のことなのに……どうしてこんなに、現実で感じるのよ。

もう、いや、やめてよ、千代、私のこと、もう、いじめないでよ、ヤなんだってば、お願いだから、いじめないで、しつこいわよ、もうやめてよ、思い出したくないのよ、ひどいわよ、怖いのよ、意地悪しないで、やめて、ほっといて、出てこないで、傷つけないで、やめてよ、もう、嫌い、やめてよ、私は私なんだから、やめてよやめてやめてやめてやめて……。