赤いエスプレッソをのせて
彼は、私が明海さんの生まれ変わりだと嘘をついていたのを、ずっと前から気付いていた?

それなのに、ずっと私の言うことを信じて、夢に、付き合ってくれていた?

まっすぐ立っていられなくて壁に寄りかかったが、そこからまたズルズルと体が崩れてしまって、骨が砕けたようで……結局さっきと同じように、床にへたり込んだ。

私は、とんだバカだ。

彼を独り占めにできるのは、お姉さんの生まれ変わりの私だけだと、信じていた……けど違ったんだ……。

彼は私がそうじゃないということにとっくに気付いていて――

もしかしたら初めからわかっていたのかもしれないし、夢なんてそもそも見てなかったのかもしれないし――

でもその上で、付き合ってくれていた。

彼のあの時の表情は、まさに、彼の演技だったんだ……。

嘘をついた私への嘘……。

そんな……ひどいじゃない、なにもかも、ひとりで知ってたなんて……。
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