赤いエスプレッソをのせて
彼へ目を向ける。

虚ろに開いた目はどこから見ても、私を見つめてくれているように見える――けど、正面から彼と向き合いたくて、スケッチブックを持ったまま、床を這って彼の前へ動いた。

瞳を見る。

黒い眼に、私が映っている。

虚ろに開いたその瞳には、私が映っているけれど……

それは、私を見ているんじゃない。

私はそこに、本当の意味で、映っているだけ……。

急に、憎たらしさといとおしさが同時に責めてきた。

「なんっ、で……!」

感情のままに、待っているスケッチブックを投げつけて、怒鳴る。

「なんでアンタ、勝手に死んでんのよ!? わっ、わ、わ、わけわかんないのよ! 殺してくれって言ったり、私の嘘に付き合ってくれてたり、絵を描きたいって言ったり、いきなりっ、死んだり!! もうっ、もうアンタわけわかんないわよ! いったい、なにがどうし――」

ボロボロと心のタガが決壊して溢れだした涙で霞む視界に見たもの。

スケッチブックのページが進んで、開けたまま、まるで彼が抱えて見せてくれているかのように思えるそれに、口をつぐんだ。

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