赤いエスプレッソをのせて
まだ開けていなかった、見ていなかったページ、裸のままシーツを抱き締めて眠る私。

書いてある題名は、ふたつ。

『素直になったアナタ』と『僕がただひとり守りたいアナタ』。

この、ふたつだった。

「……アンタ、って……」

どこまでも、紳士で、ウザったいのね。

彼は、死んでしまったんじゃない。

私が殺してしまったんだ。

私が明海さんを演じたから、お姉さんを殺された彼は今度こそ私を守ろうとして、そして守れなくて、だから――

生きていてはいけないと思い直してしまったんだ。

仕方ないじゃない、と言ってあげたかった。

アンタはあん時、風邪ですごい熱があったんだから、守れなくっても仕方なかったわよ。

それでなくても、必死に叫んでくれて嬉しかったんだから。

生きてたんだから、どうして、気にしなくてもよかったのに。
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