赤いエスプレッソをのせて
彼は、渋いのか柔らかいのかわからない、まさに『微妙な笑み』を浮かべた。

「実はですね、アナタは僕の姉さんにとてもよく似ているんです」

「似てるって、え、なに、ちょっと、まさか、その殺されたお姉さんとですか?」

「ええ」

「やだっ、ちょっともう、やめてくださいよぉーっ」

力強く、なにが嬉しいんだかコックリとうなずいた彼に、私は0・1秒で非難の声をあげた。

死んだ人間と似てるなんて言われるとなんとなく縁起悪いし、こんな変人さんのお姉さんと似てても、嬉しくもなんともない。

「いや、すみません。でも本当なんですよ」

と、山久は真剣さを増した。

「アナタは本当に、僕のお姉さんに似ている。だから、だからこそアナタにお願いするんです」

「お願いっていわれても、私って別に殺し屋とか、そういう人じゃないんですけど?」

「それは、充分わかってます。今までのデートでいろいろ確かめましたから」

はあ? と、一オクターブ高い声をあげた私に、彼は得意気に笑う。
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