赤いエスプレッソをのせて
「いえ、いろいろ試したんですけど、そういう人だったら素直に手を取らせないだろうし、ときどき後ろに立った時、機敏に反応してもよさそうですからね。素直にデートに付き合ってくれましたし」

「あ、アンタって……」

スパイ映画の見過ぎなのよ。だいたい、後ろに立ったくらいでビクビクしたりするヤツがいたら、それは殺し屋とかじゃなくて、ただ単に挙動不審なヒッキーかオタクだってば。

「ああそれから」

「今度はなんですか」

いぶかしいだ私に、山久はまた、最上級の笑みを浮かべた。

「アナタみたいに、人の言っていることをバカにしたりしないできちんと聞いてくれるような優しい人が、殺し屋のはずがありませんしね」

……そりゃただ単に、アンタに呆れてものが言えなくなってんのよ、この妄想お坊っちゃま。
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