赤いエスプレッソをのせて
そしてさらに、彼は続ける。

時々、お姉さんが夢枕に立って死んでくれと訴えかけている。

時々、お父さんやお母さんに似た人物を見つけると、謝りたくて仕方がなくなる。

お姉さんに似た人物を見た時は涙がこぼれてしまう。

私を見た時など、まさに生き写しだったらしく、一瞬なにもかもが麻痺したそうだ。

そんな、彼の話をあらかた聞いて、

「…………それで、殺してほしいって言うんですか……私に」

「はい、そういうわけです」

まとめると、彼は一も二もなくにっこり、そしてこくり。

ちょっともう、勘弁してほしいわ。私は別に、偽善を施したいわけじゃないんだから。

「――っはぁ」

彼と出逢ってから何度目ともしれない溜め息をつく。

ついて、席から立ち上がる。

彼の話を聞いている間に、ほんとにいつのまにか、グラスのオレンジジュースはなくなってしまっていた。
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