赤いエスプレッソをのせて
「なに? 自分のこともっと褒めてってやつ? 美代ネエに褒めてほしいの?」

千代はまた、こっくりとうなずいた。

わずかに笑みらしきものを浮かべているのは、私の気のせいではない気がする。

「はーいはい、アンタはいい子よ。ほんと。私の話ちゃーんと聞いてくれんだからね、嬉しいよ」

言いつつ頭を撫で撫でしてやったけど、私の手はただ空むなしい春の闇夜を素通りしただけ。

彼女はどうなのかわからないけど、あっという間に、これでいいの? という疑問が私の胸をざくざくと刺す。

私のこれは、偽善なのだ。

撫でてもらえたことが嬉しいのか、千代はまたにっこりと笑った。

その無邪気な笑顔を見て、思う。

(千代のこの笑顔も、私の作った顔なのかしら……想像で、笑ってくれたらなって思う、私の望みなの?

――だとしたら、笑わせてる私って、なんて自己満足な女なのかしらね)

思う私の肩、千代は、白く明るく光っていた。
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