赤いエスプレッソをのせて




家に帰ってから、いつものくせでショルダーバッグをひっくり返した時、見慣れないものを見つけ、

「ぬぅぅうっ?」

ミョウチクリンな声をあげてしまった。

これが独り言になりきらないのは、まあ、ひとえに千代のおかげだろう。

彼女が私の肩から、なになにどうしたの? って感じで、一緒に同じものを見てくれるからだ。

「なによ、これ。千代、知ってる?」

反応は望めないとわかってても、訊いてしまう。これもくせ。

『見慣れない物体』というのは、クリスマスとかバレンタインデーとか、あとはラブレターなんかに使われそうな、小洒落たメールカードだ。

もらっことはあっても、書いた試しがない私の人生において、他人と間接的にも繋がるこんな紙切れ、見慣れないもの以上にはならない。

いっそ宇宙人みたく錯乱してしまいそう。

イッタイ ナンデスカ コノ カミキレハ――?

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