赤いエスプレッソをのせて




朝起きて一番に、ぎゃあ、という声を産声以外であげた人間が今までの歴史上に、どんなにマイナーでもいい、いただろうか?

たぶんいない。

いや、絶対いない……って大袈裟なことを言いたいところだけど、どうやら私が、その第一号のようだった。

事実、文字通り開眼一番、

「ぎゃあ!?」

という悲鳴をあげていた。

それは、いつものことながらヒッッッドーイ寝癖の所業を目の当たりにして。

髪の毛が爆発して、うぅーむ……一言に表すと、プロレスをたしなんだライオンのたてがみのようだ。

「って、なにボーッとしてんだろ!? 千代、今何時!?」

答えてくれない妹に怒鳴るように訊きながら時計を鷲掴みにすると、もうすぐ昼の一時になろうとしていた。

わぁー、午前二時に寝て午後一時に起きるなんて、冬眠でもしてたっていうの?
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