赤いエスプレッソをのせて
馬鹿げた考えを頭から排出して、とにかくとにかく動き始める。

低血圧だから寝起きは手足が若干痺れているように感じるけど、こんなもん、気合いでなんとかし……って思っている間に、クッションに足を取られてかくりと膝から折れてしまう。

ああだめだこりゃ。

「うー……」

誰にともなく唸り、なんだかしつこくもまた頭の端のほうから蝕んでくる眠気に、

「がおー……」

とりあえずの反感心を向けておく。今こっち来たら、噛んでやるわよ……。

さあ、起きなきゃ。いけない、いけない。ほんとに起きなきゃ。

今日はまた、仲代先生の診察があるんだ。こないだ、また来てくれと言われたやつだ。

彼女はいつでもではないけど、四時頃から通院できない患者さんのところに足を運ぶことがある。

そう、仲代先生って美人で優しいのよね。

でまあ、要するにつまり、最悪の場合、サッサと行かないと仲代先生の診察を受けらんないぞっていうね。
< 57 / 183 >

この作品をシェア

pagetop