赤いエスプレッソをのせて




赤頭の変人は、

「美代さんに会えましたから、今日はほかのことはどうでもいいです」

なんてのたまうと、受信をあっさりやめて、私が出てくるのをずっと待合室で構えていやがった。

山久尚司――私はコイツが嫌い。

違う。

苦手。でもない。

うーん、まあ、とにかく、コイツは私にとって、ヘンな存在だ。

一緒にいるととにかくややこしいし、面倒くさいし、頭赤いし、うるさいし、あげく殺してくれだの言うし……。

以前、山久と出逢ったのが『四季の広場』。

彼はどうやらあの公園の名前を知らなかったらしく、あまりにせがむので仕方なく教えてやった。

「それではやり直しましょう」

すると、そう言われた。

「デートは初めから終わりまで、楽しくやらないといい思い出になりませんよ。僕はアナタにいい思い出をつくってもらいたいですし、僕もいい思い出にしておきたいんです。それなら、僕らが出逢ったあの公園から始めるのが一番じゃないですか」
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