赤いエスプレッソをのせて
だからなんでいきなりデートなのよ、と声を荒げた私を引っ張って強引に山久タクシーにのせた。

かんっぺきに拉致だ。

仲代先生なんか、デートかぁ、とかなんとかやけに年よりじみた口調でぼやいて私のことなんか放置だし、放してよ、と何度も叫んだはずなのに病院内の人達は誰ひとり、救ってはくれなかった。

中には、若いわねぇ、なんて小さく笑うおばさんまでいた。

なんなのよこれ。

「もうっ、やっ!!」

後部席に押し込められてから悲鳴のように唸ると、『四季の広場』へ、運転手に言っていた山久が突然、

「あっ、すみません。『四季の広場』よりも先に、どこか適当に買い物ができるところへ寄ってもらえませんか」

「買い物ですか?」

「ええ。お願いします」

進路を変えた。

(なに? デートに誘って、『四季の広場』から始めようだとか言ってたくせに、いきなり変えるわけ? なんなのよなんなのよそれっ)
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