赤いエスプレッソをのせて
相変わらずと言うには短い付き合いだけど、わけのわからない言動の山久からプイと視線をはずす。

左に座っている彼がじっと私のほうを見ているような気がしたが、あえてそちらには目を向けず、走り出したタクシーの窓の外、空を見やった。

雲ひとつない、快晴だ。

青が目に痛いくらいで、逆に雲のない世界というものが、こんなにもさみしく感じたのも、初めてかもしれない……。

夢がポエマーだからか、ふと思うことがある。

これだけ青い空を見ていると、それが本物なのか、時々わからなくなるんだ。

青空は、本当に青いのか。

ほんとは、あの青空には薄い薄い雲が全体的にかかっているんじゃないだろうか。

もしかしたら、いつも見ている雲の白い色こそが空そのものの色で、青いのは雲なんじゃないだろうか。

青い空が、本当に本物なのか……わからない。

それはまるで、自分が自分であるのか、自分が自分であるべきなのかを問いかけてきているようにも思えて、それを考えると心が乾いていくのが止められず、どうしようもない。

青空は、本当に、青い空なのか。

私は知りたくてたまらない。
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