赤いエスプレッソをのせて
「いやぁ、清々しいくらい青いですね、今日の空は」

と、山久が言った。

まさか私の横から見ているのかと思ったけど、ちらりと目だけで確認した私が見たのは、彼の後ろ頭だった。

どうやら自分に近いほうの窓から空を見ているようね。

なにも返さないでいると、彼はひとりで続けた。

「空が青いのはなぜでしょうね? 僕はよく空を題材にして絵を描くんですが、これがなかなか、難しいんですよ」

「へぇー」

と、テレビ番組みたいな声で相づちを打ったのは私じゃあない。運転手だ。

彼は勝手に続ける。

「光が差し込むと青じゃない。雲があると青じゃない。雨が降っても青じゃない。でもそのいずれもが、空なんですよね。

青だったり灰色だったり、紫だったりオレンジだったり、空は本当にたくさんの色を持っていますよ。もしかしたら空は、地球の心なのかもしれませんね」

まあ、……言われてみればそうだ。
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