赤いエスプレッソをのせて
服も、髪も、全部山久のコーディネートだった。

デートのために、アイツはそう言った。

そう言ったけど、なんだろう、どことなく、デート以外のなにかが、私にぶつけられていた気がする。

たとえるなら……そう、ほしくてほしくてたまらないおもちゃを見せびらかさせられた子供のような、熱い羨望の念だ。

こんなものを男から受け取った気がするというとえらく自意識過剰っぽく聞こえるけど、そんな感じがしたんだ、しょうがない。

文句は変人・山久に言ってほしいところだけど……なかなかみずから絵描きというだけあって、コーディネートは上手だった。私でも、へぇー、と思った。

女の私なんかよりよっぽどオシャレに関心があるし、服同士の配色を言えば『さすが』という感じだ。

……それにしても、『しがない絵描き』であるはずなのに、ずいぶん金銭感覚が狂ってて、無頓着なのね、アイツ。
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