赤いエスプレッソをのせて
彼は言った。

「最近ニュースで言ってるじゃないですか、通り魔がどうしたって」

ああそういえば、たしかになんか言っていた気もする。

今朝のニュースでも、通り魔の被害者が立て続けでもう三人目だとかなんとか。

教われるのは夜遅くだし、目撃者もいないってことで、なかなか捕まってないらしいけど……

「その通り魔が、今いたっていうわけですか?」

いぶかしんだ私に、山久は真剣に答えた。

「美代さん、そんな軽率に考えたらダメですよ。美代さんはアルバイトで帰りが遅いんですから、充分狙われたっておかしくないですよ?」

「だからって、ですねぇ~……」

妙に勉が熱い彼を上から下までストローをくわえながら眺め回し、ふと、

「っていうか、問題はそこじゃなくて」

思い出した。

「それでどうして、部屋の中に上がり込むんですか? 私もう家に帰ってきたんだし、鍵かけちゃえば襲われるなんてことないじゃないですか」
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