大嫌いな幼なじみと再会した場合。
葵と夜に会うことってあんまりないから、
いつもと雰囲気が違って変な感じだ。
別荘の外に出ると、塩味のする風が私の頬を撫でた。
すぐ目の前に広がる真っ黒な海に少し怖くなる。
「恵麻、寒い?」
「ううん。ちょうどいいよ。」
「そ。」
葵は海沿いに歩き出した。
沈黙……
なんかしゃべりたい…!
「えっと、真田とこういう風に出掛けるの初めてだね。そういえば。」
「お前、俺のこと嫌いだもんな。」
「あ……」
私はぎゅっと口を結んだ。
普通に否定すれば良かったのかもしれないけど、
「好き」が伝わってしまいそうで、何て言ったらいいのか分からなかった。